「第32回中日クラウンズ」でスペインのセベ・バレステロス(当時34歳)が最終ホールで見せた逆転劇は、彼のゴルフの真髄を語るうえで忘れられない出来事でした。初日から出入りの激しいプレーを展開していたバレステロスは、3日目を終わり4アンダーながらトップに立ちます。しかし最終日に激しい追い上げを見せたロジャー・マッカイが16番ホールでついにバレステロスを捕らえ、残りホールで両者がそれぞれパーを奪えば決着はプレーオフという展開に。ところがバレステロスはこの大会の後に母国の「スペインオープン」への出場が決まっており、もしプレーオフに突入してしまうと帰りの飛行機に間に合わない、という状況に追い込まれていたのでした。
迎えた最終18番、バレステロスはそのことを意識したのかドライバーショットを左の林に打ち込んでしまいます。幸いボールは林の縁まで転がり落ちてきましたが、グリーンは見えるものの樹木がスタイミーとなり、第2打でグリーンに乗せるのは至難の業。しかしバレステロスはまるで何事もなかったかのように6番アイアンを振り抜くと、ボールは高いドローを描いてグリーン奥6メートルに。これを目の当たりにした約2万人のギャラリーは、和合の森にこだまする大歓声でバレステロスを迎えました。難しい下りのスライスライン、バレステロスのウィニングパットは、美しい曲線を描きながらカップに消えていきました。
見事「中日クラウンズ」を征したセベ・バレステロスは、微かな笑みを浮かべながら無事スペインへ旅立って行ったのです。
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